2009年1月21日

クチコミの効果

仕事上、米国のマーケティング担当者と様々なマーケティングの手法について意見交換をすることがある。

どういったコンセプトで、どのようなプロモーションを行なっているかという単純な情報シェアから始まり、今後のプロダクトの流れを見越した長期的なマーケティング戦略について、米国と日本の市場性を考慮しながらのディスカッションは、なかなか刺激的で面白い。

そんな中で、どうしても意見の一致を見ることができず、けっこう激論となってしまうテーマに「クチコミ」あるいは「バズ」がある。

「クチコミ」あるいは「バズ」とは、いわゆるバイラルマーケティングのことで、人々の口から口へと語られていくことで認知や利用を拡げて(拡がって)いくこと、またはそうやって拡がることを狙ったマーケティングの手法を指す。
インターネット発展の流れの中で、CGM(コンシューマー・ジェネレイティド・メディア)が発達し、人々が口にする噂、批評の類は一昔前とは比べ物にならないスピードの差を持って伝播するようになった。そこに目をつけたマーケティング手法である。


アメリカの担当者とは、そのクチコミマーケティングにおける「効果測定」の考え方について議論が尽きない。

「クチコミは効果がある」というのは歴然とした事実である。そもそもインターネットが成長する段階で、Yahoo!やGoogleといったブランドも基本的にはクチコミで拡がっていったのだから、それは間違いない。
だが、そのクチコミは「どのくらい効果があるのか」について明確に答えられる人は少ない。というより、出会ったことがない。クチコミを狙ったプロモーションにおける「効果測定」は非常に難しい。

なにをもって成功とするのか。ここを定義せずにプロモーションを始めるマーケターはいない。GOALがないのに走り始めるランナーがいないのと同じである。
考えてみれば当たり前で、目的とそれを評価する定量的な指標が明確にならず、ROI(リターン・オン・インベストメント)が算出できない以上、(このご時世では特に)無駄なお金は1円たりとも使えない。

クチコミのネタを仕込む(これがバズなのだが)、ネタに触れた人が「人に話す」、「友人にメールで知らせる」、「自身のブログに感想を書く」、「ネット上のコミュニティで話題にする」等々の行為を行なってもらうことによって口コミは拡がっていく。
これらの現象をすべて収集することはできないし、ポジティブなクチコミなのか、ネガティブなクチコミなのかを判断するのも主観に頼らざるを得ない場合が多い。そして最も難しいのが、そのクチコミによってどれだけ利益を得ることができたのかをどうやって判断すれば良いかという点である。


従来のマスマーケティングでは、テレビや新聞といった巨大メディアを使ってメッセージを大量に消費者に向けて発信し、その認知度やイメージの浸透と売上や市場シェアを連動させて効果測定を行なっていた。
それがインターネットという双方向且つデジタルなメディアが誕生したことで、消費者に向けて発信したことに対するレスポンスを受け取り、即分析しながら、その場で購買行動にまでつなげることができるようになった。効果測定は非常に細かい数字にまで落とし込まれた上で検討、判断され、次の施策に反映される。

例えば、インターネットのポータルサイトに広告を掲出して、自社サイトに顧客を誘導する場合は、当該ポータルサイトでの掲出数(Imps)とクリックされる割合(CTR)、そして自社サイトに誘導できた顧客の数(UU)と最終的に購買行動を起こしてくれた割合(CVR)、顧客あたりの単価(ARPU)、さらにはライフタイムバリュー(LTV)などを指標とするのはわかりやすい。


こういった指標がクチコミの場合で定義されていない現状において、あまり深く考えずに「いくつのブログで書かれたか」とか「有名なブロガーが取り上げていた」とか「(仕込んだ)ネタで検索したら○○件ヒットした」といった指標で効果を測ろうとする人もいるが、ちょっと考えてみると、それではマーケティング本来の目的である「利益の最大化」にどの程度寄与できているのかまったくわからない。

例えば、「(仕込んだ)ネタで検索したら○○件ヒットした」という考え方は、膨大な情報が氾濫するインターネットの中に点在している小さな点を数えて「○○件あった!」と喜んでいるに過ぎず、その情報が何人の消費者に届いているかというところまでは掴めない(そもそも、その「ネタ」で検索している人は担当者だけかもしれないし...)。
いずれにせよ、これでは「何人の人に伝わって」、「何人の人が好意を持ち」、「何人の人が購買してくれたか」といったことがまるでわからないのである。


アメリカの担当者との議論でも、最終的には「現状では、大規模なキャンペーンとバズマーケティングを同時に行うことで効果の最大化を狙っている」というところに落ち着いた。大きなバジェットを必要とせずに効率的に消費者に広がっていくことが特徴のクチコミがこれでは本末転倒となってしまう...

クチコミに効果があるのはわかっている、それをどう評価すれば良いかがわからない。
試行錯誤を繰り返しながら効果指標を探している現在の状態から早く抜け出して、溜まった知見を活かしてより効果の高いクチコミマーケティングができるようになりたいものである。

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