2008年11月20日

当然だけど、当事者によって見方は変わる

11/10付けの日経ビジネスで、「巨大流通業 JR(ジャパン リテール)」という特集があり、その中でかなり多くの部分を新宿の駅ビルであるルミネの再生にスポットを当てていた。

日経BPオンラインのアカウントを持っている方は記事がそのままPDFで読めるので、ぜひ次の題名をクリックして読んでいただきたいが、「
乗客を“上客”にするワザ ~テナント店員が感涙に咽ぶ理由~」と題し、新宿の駅ビルとして立地に胡坐をかいていたルミネが、どのようにして若者をとりこにするファッションビルに変貌し、勢いのあるテナントが列を成して出店したがる駅ビルに生まれ変わったのかについて、ショップへの対応、ショップの社員(従業員・販売員)への気配り等、執拗なまでの「売り場主義」を貫いたが故の成功であることが、ルミネスト大会という最優秀販売員を決める内輪の大会を中心に書かれている。

現場主義、売り場主義を貫くことは、マーケティングの本質であり、とても良いことだと思う。お客様があってのマーケティングという意味で。

記事の中で、下記のような記述があった。

売り場の鮮度に対するこだわりは、頻繁に実施される改装にも見て取れる。ルミネは毎年、ショップの約15~20%を入れ替える。5~6年もたてばまったく違う売り場となる可能性もある。実際に新宿の「ルミネエスト」に入居する192店舗のうち、2007年から2008年秋までに新規オープンした店舗は79店舗にもなる。
「お客さんに常にワクワクした気持ちをもっていただきたい」と、花崎社長は狙いを語る。

この箇所を読んだときに、ちょっとした違和感を感じていたのだが、今日全然別の「1万人が怒りの声を上げた『ベルク』立ち退き騒動とは?」を読んで、違和感の元がわかったような気がする。

感じていた違和感は、ルミネはまさに特集のサブタイトル通り『ルミネにとっての上客』しか見ていなかったのではないかということ。
ルミネにとってARPUの低い客は客ではなく、そのような客を相手にしているショップもまた、ルミネにとっての価値は低いのだろう。でなければ、長い年月「ルミネの○○」という店を愛してくれた客と、そのような客を育んでくれたショップを簡単に切ることなどできるはずがない。テナント店員が感涙に咽ぶとき、お客様は悲しみの涙に暮れている。


小さなカフェを愛する1万人を超す署名を無視する形で退店を迫るルミネと、常連客から愛された「ルミネの○○」を守りたいショップの攻防。記事は下記のような形で閉じられている。

こうした客の声をルミネはどのように受け止めているのか。取材を申し込むと、「契約にかかわることなのでお答えできない」(同社広報)との返答。だが、その一方で、ベルク側には、契約が切れる来年3月までに退店するようにとの文書を9月末日付けで送付していた。そして文書には、「退店しなければ、賃貸料を大幅に値上げする」との一文も付記されているという。既に届けられた先の1万人分の署名は無視された格好だが、迫川さんは、年内中にもう一度、新たに集まった署名を提出する予定だと話す。店長も、裁判に訴えずに、あくまでルミネ側の理解を求めていく意向とのことだが、強硬姿勢を貫くルミネにその思いは伝わるのか。成り行きを注視したい。

日経ビジネスとサイゾーの記事を同列で見るなという声も聞こえてきそうだが、記事は記事。本来は双方の立場に立った取材をした上で「こうあるべき」というのがジャーナリズムなんじゃないの?とも思うのだが、そこは突っ込まずにおきつつ...

今回思ったことは、「お客様に上も下もなく、自社ブランド(サービス)を愛してくれているお客様はすべて大切にすべき」というなんだか当たり前の教訓であり、その上で、企業として効率化や売上・利益の最大化をどのように考えていくべきなのかという難題。

答えが出せたら名経営者になれるんだろうか。いや、そもそも誰もが納得のいく答えはないのかもしれない。

2008年11月17日

簡単な話だった(Googleのストリートビュー問題)

このブログでも以前とりあげたGoogleのストリートビューに関する問題。サービスの利便性とプライバシーの保護をどのように両立させるかという問題についてですが、本質的なところを突いた発言(しかも一言)があったのでご紹介します。

「プライバシーの問題に後から対処するのは難しい。合法であっても(ユーザーが)不愉快に思うものは作ってはいけない」

CNETのインタビュー記事の中で、Microsoftのプライバシーに関する政策の責任者であるPeter Cullen氏が語っている一言です(リンクはインタビューの冒頭に飛びますが、引用した発言自体は最後の最後にしています)。


「なんだそんなの、当たり前じゃないか」という意見が聞こえてきそうですが、ボク自身もエントリで長々と「良くない」理由を書いていたのですが、言いたいことはこのことだったのです。自分が書く前にも、いろんな人のいろんな意見を読んだり聞いたりしましたが、これだけ短い文章で的を射た表現に出会ったことがなかったので(他でどなたかが同様の一言を発言していたらごめんなさい)。


Microsoftの幹部が発言しているということのみがちょっとアレなのと、すでにストリートビューだけではなくGoogle Mapのマイマップ機能がデフォルトで全世界公開仕様になっていることも話題になっていて、話はいろいろなところに飛んでいっているような気もしますが、サービスを立ち上げるにおいてはまさに正論であり、サービスを作る上での大前提として肝に命じておかなければいけない一言だと思います。

管理職は誰が育てるのか?

日経ビジネス オンラインに「管理職が壊れる〜企業内“多重債務者”の悲鳴」という記事が掲載されています。

部下の人事評価、セクハラ・パワハラ対策、情報管理、内部統制…。
中間管理職が“多重責務”に押し潰されそうになっている。
仕事が増えても給料は上がらず、やる気はどの階層よりも低下する。
生気のない上司を見て、若手は「管理職にはなりたくない」と言い出した。
組織を支える「ゼネラリスト」の崩壊。日本企業の新たな危機だ。

上記を枕に大企業での事例を交えながら、これからの中間管理職を企業としてどのように育て、どのように扱っていくべきかを問うている記事で、非常に参考になるとともに、とても考えさせられました。

部長や課長といった、いわゆる中間管理職の役割はいくつもありますが、主なものを上げるとすれば以下の3つに集約されると思います(日経の特集では様々な役割を称して多重債務としていますが、突き詰めればこの3つなのではないかと)。

1、自部門の数値目標の達成
2、経営層が唱えるビジョンの末端までの浸透
3、部下の育成、指導(マネジメント)

この3つを同時に達成させることが中間管理職の職務であり、経営層はその3つの達成をある一定の裁量とともに中間管理職に託します。

さて、昨今の日本の企業では、米国に端を発した未曾有の金融危機に巻き込まれまいと、業務の効率化、スリム化を提唱しています。無駄な費用を徹底的に削減し、すこしでも費用を抑えることで原材料の高騰や売上の減少から利益を守ろうと必死です。費用の削減は業務委託費や人件費にも及び、業務委託契約の解除や残業の抑制も命令として降りてきます。

このような状況の中で、中間管理職にはどのような裁量が与えられているでしょうか。
数値目標の必逹、変わらない経営ビジョン、OJTでなんとか育てなければいけない部下達を抱えながら、実際に業務の効率化を行うのは現場の中間管理職なのです。今や、中間管理職に与えられる裁量権とは、費用を削る裁量だけなのです。

そして託された役割のうち、ひとつでも達成できなければ、管理職として失格の烙印が押されてしまう。これで中間管理職のモチベーションが維持できるとは到底思えません。

管理職の士気が下がり疲弊した姿を間近に見た部下達がその管理職に付いて行こうと思うでしょうか。
同様に、自分たちもいずれ管理職になりたいと強く思うでしょうか。
そして、そんな管理職と部下達で構成される職場が高い生産性を発揮できるでしょうか。

ここから先は、以前のエントリで書いたいたことと重複するので、詳細はそちらを見ていただければと思いますが、企業が中長期的な成長戦略を描き、その戦略通りに推進していこうと思う時、最大の武器になるのは中間管理職を含めた従業員なのだということを、もう一度真摯に考えなければいけない場面なのだと思います。

2008年11月9日

Web2.0の梅田望夫さんが変なこと言ってる件

ことの起こりは、著書『ウェブ進化論』で日本中に呪文のごとく「Web2.0」という言葉を流行らせた梅田望夫氏が、自身のブログである本の紹介をしたところ、そこに批判的なコメントが並んだことが発端。
実際のエントリは「水村美苗「日本語が亡びるとき」は、すべての日本人がいま読むべき本だと思う。」というものです。

そのエントリでコメントが荒れていることにカチンときた梅田氏がTwitterでつぶやいたものを引用すると、

はてな取締役であるという立場を離れて言う。はてぶのコメントには、バカなものが本当に多すぎる。本を紹介しているだけのエントリーに対して、どうして対象となっている本を読まずに、批判コメントや自分の意見を書く気が起きるのだろう。そこがまったく理解不明だ。

そうとうカチンときて、思わず書いてしまったのだと思いますが、この発言が話題になり、いろいろなところでいろいろなことを言われています。

見てわかる通り、このつぶやきは2つの要素から成り立っています。
ひとつは「はてな取締役であるという立場を離れて言う。はてぶのコメントには、バカなものが本当に多すぎる。」という部分、そしてもうひとつが「本を紹介しているだけのエントリーに対して、どうして対象となっている本を読まずに、批判コメントや自分の意見を書く気が起きるのだろう。」という部分です。

後者は至極真っ当な意見であり、これだけ書いておけば誰も何も問題にしなかっただろうし、本も読まずに批判コメントを書いていた人たちも、もしかしたら反省したかもしれません。

ただ、前者がいただけません。
取締役である梅田氏が取締役という立場を離れてそのサービスと利用者(お客様)に対して「バカなもの」というような発言をしている点。

梅田氏は、企業の経営を取りまとめているはずの人間であり、そういう仕組みのサービスを世に出してきた張本人が発言してしまったことが大きな意味を持ってしまいました。

本人からしてみれば「途中から取締役になった」ということを言いたいかもしれませんが、それはお客様にはまったく関係のないことで、取締役を受けた以上、言ってもいけないし思ってもいけないことです(言ってもいないし思ってもいないかもしれませんが)。
そして、取締役である以上、こういったことを考えながら日々サービスや経営のことを考えていかなければいけないのではないでしょうか。

特にCGMやソーシャルメディア系のサービスを提供する上で、最初に仕組み自体をゆるく設定してしまうと、そこでどのようなやり取りが行われ、どのようなコミュニティに育っていくのかについて、サービス提供側がコントロールできる部分は相対的に少なくなります。
自分たちの提供するサービスが自分たちの目指す形、お客様の理想のコミュニティに近づけるように、最初から(途中からでも)ある程度のルールを設定し、ルールにあわない発言や利用者を排除できるようにしておくのもサービス提供者の責任でもあります。

その責任を放棄してお客様を見下したような発言をしてしまうような取締役は、取締役を離れた発言をする前に取締役自体を離れてから発言すべきかもしれません。

お粗末なWebプロモーション事例(NHKスペシャルの場合)

11/10(月)放送予定のNHKスペシャルで、「デジタルネイティブ ~次代を変える若者たち~」というのをオンエアするそうです。

番組自体にも興味がありますが、ジタルネイティブ度チェック(ページ内にボタンあり)というものがあったのでやってみました。


結果は上の画像にある通り、75%。
この数字が何をさすのかは良くわかりませんが、とりあえず「へぇ〜」って思っておきました。


それより、NHKさん。

NHKスペシャル全体を紹介するサイトから辿っていく当該番組案内「デジタルネイティブ ~次代を変える若者たち~」から、「この番組独自のプロモーションページ」へ直接リンクが貼ってないってどういうことなんでしょう?

せっかくインターネット上でプロモーションを行っているのに、お客様の導線をきちっと考えていないから、ネットの特性であるWeb(蜘蛛の巣)の様にお互いがリンクで繋がっておらず、単独のプロモーションサイトが複数存在するだけになってしまっている(番組プロモーションページからNHKスペシャル本体へのリンクはあるけど、そこからは戻って来れないというパターン)。

これって、お客様を無視した部署ごとの縦割りのマーケティングがまかり通ってる証拠なんですけど。


ま、人のことあまり言えないという自戒を込め、「人のふり見て、我がふり直せ」を肝に命じて明日からまた仕事しようと思います。

2008年11月7日

おばあちゃんだけじゃない「知恵袋」

Yahoo! JAPANが日本最大級のナレッジ数を誇るYahoo!知恵袋において、All Aboutの専門家と組んだYahoo!知恵袋×All About プロファイル 専門家回答というサービスを展開しています。

いままでも専門家による期間や質問限定の回答はあったようですが、複数カテゴリ全体且つ131名(11/6現在)もの人数による常設のものは初めてだと思います。

Yahoo!知恵袋といえばユーザー参加型(CGM)の代名詞としてここまで大きくなってきたサービスであり、そこに今回のプロの投入はどういう意味を持つのでしょうか。リリース(お知らせ)から今回の試みに関する肝の部分を引用してみます。
「Yahoo!知恵袋×All About プロファイル 専門家回答」では、「All About プロファイル」に登録する各分野の専門家が、その専門知識を生かして、Yahoo!知恵袋での質問に回答をおこないます。

専門家が回答した投稿については、アバター部分に顔写真、その下へ、「専門家バッチ」が表示され、専門家であることが識別出来るようになっております。
また詳しいプロフィールについては、各専門家のMy知恵袋ページや、投稿文の下へ表示される(参考ページ)から、All About プロファイル個人ページをご覧ください。

この連携により「住宅」「マネー」「法律」「ビジネス」といった専門的なカテゴリへの質問に対してもより的確な回答が期待できます。

引用部分にもあるように、今回の提携により期待される効果としては、下記のようなものが考えられると思います。

1、専門的なカテゴリの質問に対する回答の信頼性向上
2、プロ、アマが同じ土俵で積極的に意見を出し合うことによる全体的な質の向上
3、それぞれのサービス間でのユーザーの対流による新規顧客の獲得

逆に、デメリットはないのでしょうか?

1、プロの参入により、活発に回答していたセミプロ級ユーザーのモチベーション低下
2、CGMが持つ、良い意味でのグダグダ感が薄れることによるユーザー離れ
3、上記1、2が進むことによる、専門カテゴリとその他のユーザー層、イメージの格差

メリットの裏返しを考えると、↑このあたりには気をつけた方が良いのかもしれません。

いずれにせよ、Yahoo!知恵袋CGMサービスを起点として成長していく上で、第2段階に突入したと考えられるアプローチだと思います。

2008年11月5日

ビジネスSNSサービス「CU」


Yahoo! JAPANがビジネスSNSサービスの「CU」を始めました。

現在属している企業や組織を飛び越えて、人材交流の場となるべく「実名」で登録し、議論やコミュニケーションを行っていくサービスとなっています。
もちろん招待制であり、「実名」がルールである以上、変な輩を招待するわけにもいかないし、招待された側としてもそこで暴れまくるのも大人げないという抑止力が働くことになるかもしれません。

mixiやGREE、モバゲータウンといった匿名性を持たせながら、ややもすると個人が識別できて問題になるような日本のソーシャルサービスのあり方に一石を投じる、ある意味潔いサービスではあるかもしれません(まぁそうは言っても、欧米では実名でソーシャルサービスに参加するのは結構当たり前だったりするので、日本だけの潔さに過ぎませんが)。

某掲示板や某つぶやき系サービスではすでにちょっとしたお祭りになっていますが、どのようなサービスに育っていくのか、まずは登録だけでもしておいて損はないかも。

2008年11月3日

企業の成長とステークホルダー(忘れ去られた従業員)

企業を成長させていく上で、経営層は本質的に株主に対して、株主価値や企業利益の最大化をコミットした上で経営を行っていますが、ここ最近の「企業の社会的責任」を考慮した上で、企業は株主だけではなく、株主を含むステークホルダー全体に考慮した経営を行う方向に舵を切っています。

あまり景気の良くないこのご時世において、企業を成長させながら、同時に各ステークホルダーを満足させるにはどうすれば良いのでしょうか。

そもそも、ステークホルダーには、株主などの投資家の他にも、従業員、顧客、取引先、競合、マスコミ、社会全般と、範囲を広げれば際限なく広がってしまうので、ここで便宜上「企業の成長に最も影響を受ける」という条件でステークホルダーを定義し、株主(投資家)、従業員、顧客がステークホルダーだとしたときに、経営者はどのようなバランスで各ステークホルダーに向き合えば良いのか考えてみます。


企業が成長し、利益が増え、株価(時価総額)が向上すると、まず最初にわかりやすい形で利益を享受できるのは株主です。
ただし、株主価値を最大化が従業員の犠牲の上で成り立っているような経営では、ステークホルダー全体に配慮した経営になっていないということになります(詳細は後述)。

また、企業の成長には顧客満足度を向上させることも欠かせません。お客さまあっての商売であるということは、今も昔も不変の定理です。
顧客もまたまぎれもなく企業のステークホルダーですから、顧客満足度を向上させることはステークホルダーに向き合った企業経営のあり様と言えます。
しかしながら、ここでも企業は顧客満足度だけに執着し、従業員の満足度にはそれほど目を向けていない現状があるように思えます。

端的に表現するならば、「顧客の意見を聞き、望むものをタイムリーに市場に投入することで、常に売上を伸ばし、且つ利益率は落とさない」という経営方針が続くことになり、そのためには経営の効率化、無駄な費用の削減、従業員一人当たりの生産性の向上等を行う必要があります。
それぞれはすべて企業としての当たり前の考え方なのですが、効率化し、削減し、同時に生産性を上げることが、従業員の犠牲の上に成り立っていては意味がないのです。というより、長続きしないのです。

最初のうちこそ、従業員の士気は高く、生産性を上げることができても、上がった利益の対価となる十分な収入、あるいは収入以外の満足度向上要因が与えられなければ、それはストレスとなり、ストレスが蓄積すれば疲弊し、モチベーションも下がり、結果として生産性は落ちていきます。生産性が落ちてしまうので、従業員のスキルを上げようと思うのですが、無駄と思っていた教育関連費用は削減してしまったので、十分な教育や研修を受けさせることができない。現場で育てようと思ってもOJTにも限界があります。ならば、新たに従業員の頭数を増やそうとするのですが、利益率を落としてしまうので販管費(人件費)は増やせない...という悪循環にはまってしまう。
結果、長い目で見ると、企業の成長は滞り、ステークホルダー全体の満足度が下がってしまうことになります。

では、株主や顧客の満足度を上げるのと同時に、従業員の満足度を上げる方策があるのでしょうか。
上記のシミュレーションでは従業員の生産性を下げる要素として3つのキーワードを登場させました。ひとつは「ストレス」、つぎに「モチベーション」、最後に「スキル」です。これらのキーワードをもとに考察を続けます。


従業員の感じている「ストレス」は心身両面のものであり、仕事から受けるもの、家庭環境、将来への不安等様々です。これらのストレスを単一の方法で解決することは難しく、総合的なストレス軽減対策を講じなければいけません。

ストレスを軽減させる方法やメソッドは様々なところで語られていますが、それを奨励したり個人に任せたりするレベルを超えて、企業内に専門の部署をおくことが重要です。自分の職場にきちんとした対応部署がある、会社は自分たちの心の健康をきちんと考えてくれているんだという思いを従業員に持ってもらうこと自体が従業員の安心感につながります。
従業員が専門部署に気軽に相談できる環境を整え、従業員のメンタルヘルスを向上させることでストレスが減り、勤怠も向上(欠勤や遅刻の減少)し、仕事の効率も上がっていくことが予測できます。


次に、どうやって従業員の「モチベーション」を高めていくかということについては、わかりやすい報酬面から紐解いていきます。
従業員は前述したようにステークホルダーの一員ですが、企業が成長するに従って、株主価値や顧客満足度は向上していても、自分たちには十分な見返りが与えられていないという不満を抱えています。もちろん従業員の要求すべてに応えることはできませんが、自分がどのようなことを期待され、その期待に具体的にどこまで応えることができたのか、そしてその対価としてどういうロジックで現在の報酬を受けているのかが納得できていることが重要です。

企業が利益を上げているのに、自分(従業員)たちの収入だけは上がらないことを従業員に説明する際に、「企業が成長を続けていき、利益を上げ続けることで、投資家やお客様に喜んでもらわなければいけない。彼らにそっぽを向かれたら会社自体が存続できなくなる。だから効率化し、無駄を省き、生産性を上げるのだ。」と説明しても従業員には伝わりません。逆に従業員は「オレらがそっぽ向いたらどうするつもりなんだ?」と思うことでしょう。

こういった誤解を避けるためにも、企業としての成長戦略をきちんと従業員にも説明し、そのために個々人(の持つスキル)に対してどのようなことを期待しているのかを経営側と従業員側で「握る(コミットする)」ことが大切です。そして握ったことに対して結果を出したものには、きちんとした報酬を与えることが重要になってきます。
企業の成長のために期待されている事柄を理解し、そのことについて経営層と握った約束を達成した場合に、対価としてきちんとした報酬を受けられれば、従業員は誇らしさとともに次の成長に向かうモチベーションを高めることができます。


最後に従業員の「スキル」を高めるために何をすべきか、前述したように職場でのOJTには限界があり、新しい考え方や最新の技術を取り入れていくのに時間がかかってしまうことが多くなります。長い目で見て、業務の効率化や無駄の排除を断行するためにも、従業員のスキルを高めるための教育関連費用はケチってはいけない領域なのです。

よく、「うちは中途採用の即戦力しか採らないから」という企業もありますが、中途採用だからこそ、他社のために特化されている従業員の技能を、いち早く自社の戦力となるように教育(方向付け)していかなければいけません。粒は揃っているのにチームとなると力が発揮できないのは、チームメンバーのスキルセットが凸凹になってしまっているためです。
即戦力として採用した従業員に自社の事業戦略を理解させ、前線で戦うチームの凸凹を整え、どのような業務で彼らのスキルを発揮してもらいたいのかを明示することでミッションの達成までの時間を短縮させます。この「凸凹を整える」ときにきちんとした教育が必要になってくるのです。


企業が中長期的な成長戦略を描き、それを実現させようとする時、多くの役割を担うのは従業員です。
経営者はステークホルダー全体に考慮した経営を行うのであれば、株主、顧客と同様に従業員の働く環境にも最大限の考慮をすべきなのではないでしょうか。