2008年10月18日

「死ぬことと見つけたり」(上・下) 隆 慶一郎

いろいろな本を読みますが、髷(まげ)モノも結構好きです。

その中でも今回ご紹介する「
死ぬことと見つけたり(上・下) 隆 慶一郎」は、何回も何回も読み直してボロボロになってしまったので、新しいものを買ってまた何回も読んでいるくらい好きです。

物語は、江戸期の佐賀鍋島藩の浪人を主人公に描かれているのですが、この主人公が無茶苦茶な人物でとにかく面白い。男として面白い。

例えば、武士の生き方として、「朝、起きる時、布団から出る前に一度死んでおく」のだそうです。それも毎日違う死に方をする。考えられる限りの死に方をなるべく克明に、痛さ、苦しさも含めて体験しておく。
そうして毎日、朝一番に一回死んでおくと、その後なにがあっても怖くないんだそうです。戦で鉄砲の弾が当たりそうな前線でも「ああ、一度経験したことがある。最初にちょっと熱いだけで死に方としては楽なもんだ。」みたいな事を言いながら銭湯にでも行くように飄々と相手に向かっていく。

常住坐臥(じょうじゅうざが)、常に死人(しびと)となっておくことが重要なのだそうです。
生きている人は、生に執着するあまり死ぬことを恐れ、力を出し切れない。そこへいくと死人は既に死んでいるのだからなにも恐れない。刀を持っている腕を切られれば足で蹴り倒し、足も切られたら這っていって相手の首を歯で噛み切る。そんな死人が武士の原点なのだそうです。

ネイティブ・アメリカンたちが「今日は死ぬには良い日だ」なんて言い方をして、カッコイイ生き方だなぁなんて思いますが、ぼくはこの本の主人公に対して、それと同じような憧れにも似たイメージを持っています。

毎朝一回死んでおく。というのは物騒ではありますが、そのくらいの気構えで生きていくと何でもできるんだよ。といったメッセージなのかもしれません。

ちなみにこの本は、武士の教科書とも言われた『葉隠れ』という難しい本を、作者である
隆慶一郎氏が独特の人物描写で痛快に書き上げたものです。

氏はかなり高齢になってから作家に転身したこともあり、未完の作品が多いのですが、この本もそのひとつで、最後の一番良いところで物語りはぷつっと終わってしまっています。
ただし、氏が病床で記したメモと編集者へ口頭で伝えたプロットを追いかけながら、最後は「こうなる(と思う)」という形で一応終わっているので、しらけることはありません。

すっきりとした読後感が得られる、良い本だと思います。




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